彼は高校受験のために面接と作文が必要になりました。彼は自分がまったく書ける気がしておらず、どうしたらよいのかと相談を受けました。
書けるようにするのはもちろん課題ではあるのですが、ただ、その前にそもそもなんのために高校行くのかを彼は考えられているのでしょうか?
入試、勉強、塾、習い事など、何かの取り組みをスタートする時に大切なことは、何のために習うのかという目的を本人に自覚してもらうことです。
目的を持つことで、それを目指して自分で進めて行けるようになります。
ただし最初から自分で目的を明確にできる子どもはそうはいません。
生徒が高校入試に向けて取り組んでいたとしても、目指そうとする何かがあるわけではなく、ただ周りに合わせて動いているだけになっているかもしれません。
学力試験の受験であれば高校に入学する目的を考えなくても進めて行くことができます。当然、何のために高校に行くのかを特に考える機会もなく、目的も持たないまま進学する生徒は珍しくありません。
そこで、先に面接対策の中で進学の目的を明確にすることにしました。
その次に、作文に取り組むことでスムーズに進められそうです。
面接で聞かれるであろう質問はいくつかあります。
志望理由、高校でやっていきたいこと、将来の夢。
などある程度決まっていて、変わったことは聞かれません。
その質問に答えられるように面接対策では、あらかじめ回答の要点を準備しておきます。
回答のための文章を書いて、それを一生懸命暗記しようと苦労する生徒がよくいます。それはそれで良いのですが、覚えたら今度は忘れたらどうしようと、不安や怖れを感じることになってそこでまた苦労することになりがちです。
そこは、うまくステップを踏むことで苦労せずに本番で自然に質問に答えられるように持って行くことができます。
ただ、生徒の能力で指導方法は違います。
彼の場合は、面接以前のもっと根本的なところから取り組む必要がありました。
彼が答えられるであろう、かみ砕いた質問をしていきました。
ところが、
考えられない。
と言われてしまい先に進みません。
本当に考えられなかったとしたら、手の打ちようはありません。
なぜ彼は考える事ができないと考えているのでしょうか?
彼に考える事について何が起きているのかを聞いてみました。
私 「考えるって自分の頭の中から何かを想像するとか?探そうとかしている?」
生徒「うん」
私 「なるほど…それは大変だね 情報が無ければ考えることが出来ないかもしれないよ。情報って何を調べればよいと思う?」
それで志望校のパンフレットやホームページの資料を熟読するように伝えました。
その中から生徒自身が興味を持てそうな勉強や行事、部活、進路先などを探させます。
パンフレットからキーワードを抜き出して、キーワードを使って話をしてもらいました。
それをその場でLINEに入力させます。
この過程では私はもちろん彼の話をしっかり聞くのですが、彼の言葉足らずに聞こえる部分で私の方から言葉を足したりといった助けはしません。あくまで彼に話をさせて、それをLINEで書かせていきます。
それで文章ができていきました。それは彼が自分で考えて書いた文章です。
これまでは、彼は「考える」ことに苦手意識を持っていました。
LINEに入力していてもそれを自分が書いたのか、本人があまり意識できてない可能性があります。
彼には自分は「考えられる」と思ってもらいたい。
そこで、ひとつのステップを入れました。
私「その文章は誰が作ったの?」
少し時間を置いて、
生徒「自分です。」
自分が考えて、文章を書いたことを自分で認識する機会を作ります。
こうして自分で自分ができることを認めることは大事なことです。
それが自信につながっていきます。
その上で面接対策に戻りました。
面接で聞かれるであろう質問をすると、先ほど文章にしたことが回答としてすらすら出てきます。
本人も面接の質問に答えられたことに驚いていました。
回答の文章を作るために、まず最初に本人が興味の持てる事を選んでいます。
その上で自分で考えた自分の言葉を使って回答の文章を彼が自分で作りました。
だから無理して暗記することもなく質問されたらその回答がでてくるようになっているのです。
この後に作文の指導に入りました。
面接対策と同じキーワードを使って文章を作っていきます。
この段階に入ると同じ事を繰り返すことになるので、苦手意識は多少緩んでいました。
彼は文字を書くことに抵抗感を強く持っていたため、またLINEを使いました。
作った文章をLINEに入力、画面を確認しながら文字を原稿用紙に記入していきます。
漢字に対しても苦手意識をあるため、辞書を使って確認しながらの作業です。
このような指導の結果、考えることも出来ない、文章も書けないと言っていた生徒が数時間で原稿用紙1枚(400字)を書けるようになりました
自分の「考えられない」「書けない」といった思い込みをはずして、適切なステップをふむことで考えられて、書けるようになります。
本当は誰でも考えられるし、文章も書けるのです。

